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「なまなりさん」――呪いは、証言者を残す。

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 この本のざっくりとした内容 
  • 著者は怪談ブームの火付け役・中山市朗さん
  • ある退魔師が著者に語った「双子の美女を取り巻く怪異譚」
  • モキュメンタリー映画を観るような展開が見どころ

こんにちは!みずたまです。

kindle-holicはkindle unlimitedで読める不思議な話・奇妙な話を紹介しています。

本日は「なまなりさん」(角川ホラー文庫・中山市朗著)を紹介します。

長編の実話怪談が読みたい!


そんな方におすすめの本です。

目次

中山市朗 「なまなりさん」
著者紹介

中山市朗氏は著名な怪談蒐集家・オカルト研究家・作家。

1990年代に「実話系怪談」のジャンルを確立させ、現在まで続く怪談ブームの火付け役になりました。

本書のキーワード

実話系怪談

体験談と思われる幽霊話・怪奇話をベースに、体験者たちの名前を仮名(Aさん、Bさんなど)にするなど、リアリティを持たせた怪談のジャンルのひとつ。

その実話系怪談の中でも、「あまりの祟りで映像化できない」と恐れられた作品が、今回紹介する「なまなりさん」です。

それでは見ていきましょう!

中山市朗 「なまなりさん」
内容

なまなりさん――あらすじ

2006年の秋、怪異蒐集家・中山市朗はかつて仕事で関わりがあったプロデューサー・伊東礼二に会っていました。

伊東は三年ほど前、かつて自分が関わった怪異「なまなりさん」の映画化を企画していました。

そしてその監修を中山に依頼したのです。

しかしその直後、伊藤は次々と不幸に見舞われます。
映画の話も立ち消えになりました。

数年後、「なまなりさん」について何も知らないまま終わった中山は渋る伊東に頼みこみます。

すると伊東はこう答えるのでした。

伊東

もう一度念を押しますが、後悔しませんね。

一旦「これ」に関わったら、それはそちらに行くかもしれませんよ

ーー引用元:中山市朗著「なまなりさん」

そんな不気味な前置きの後、伊東は「なまなりさん」を語りはじめます。

それは十年前、伊東の後輩・健治とその婚約者・沙代子が、ある双子姉妹によって人生を狂わされていくことから始まりました……。

なまなりさん――物語の構成

これは、二日間にわたって伊東氏が語った”なまなりさん”の採録である。

「なまなりさん」角川ホラー文庫より引用

なまなりさんは三つのパートで構成されています。

  • 双子姉妹から沙代子への壮絶な嫌がらせ~沙代子失踪~双子が地元に帰るまで(一日目)
  • 双子姉妹の実家・島本家で怪異が起こる~島本家の終焉まで(二日目)
  • 登場人物のその後(後日談)

筆者が呪いの経験者(伊東)から「二日間のインタビューで聞き取った話+後日談」の三つです

パートごとに見どころを解説していきます。

一日目:人が怖い――日常を破壊される恐怖

1990年代中頃・東京

事の始まりは10年前。

伊東は当時、フリーのプロデューサーをしていました。

そんな伊東を兄貴と呼んで慕うカメラマン・健治には沙代子という恋人がいます。

爽やかでスポーツ好きの、実にお似合いな二人でした。

しかし幸せな日常は美しく裕福な双子姉妹・島本香奈江鈴江が現れたことで一変します。

香奈江が健治に執着し、沙代子に壮絶な嫌がらせを始めたのです。

最初は気丈に振舞っていた沙代子でしたが、次第に追い詰められ、様子がおかしくなっていきます。

更にある決定的な事件をきっかけに、とうとう沙代子は失踪してしまいました。

そして……

沙代子の結末についてはぜひ本編を読んでみてください。
救いようがないです……。

沙代子の悲劇から一年後。双子姉妹の両親が一連の出来事を知って上京します。

双子は健治に謝罪し、故郷の新潟に帰ることになりました。

その過程で伊東が退魔師であることを知った双子姉妹の父親は、こう言います。

島本姉妹の父親

あの娘たちは、えらいものを背負い込んでしもうたんです。(中略)
伊東さん、お頼みします。何かあったら、ぜひ新潟へ来ていただけませんか

ーー引用元:中山市朗著「なまなりさん」

伊東は沖縄出身で母方は琉球王朝のシャーマンの家系。伊東自身も琉球金剛院正一位法会師(つまり除霊師・退魔師)の資格を持っています。

ただ、この時点での伊東は霊の存在に否定的です。

過去に心霊相談を受けた人たちは思い込みや精神的なものだったので、「怨霊なんていない、だから安心してください」と答えるのが退魔師としての仕事と思っています。

しかしその時にはもう、沙代子の呪詛が島本家に忍び寄ってました。


この章だけでももう十分に怖いのですが、ここまではプロローグです。

二日目では「なまなりさん」の怪異が始まります。

二日目:「なまなりさん」という怪異

1999年~2003年新潟県A市/東京

双子が東京から去った二年後、双子の片割れ・島本鈴江から伊東に電話がかかってきます。

それは香奈江(健治に片想いしていた方ですね)の様子がおかしいという知らせでした。

伊東は双子の実家・新潟の島本家へと向かいます。そこで怪異を体験し、沙代子の気配を感じます。

不思議なことに、怪異に悩まされていたのは、彼女を死に追いやった双子姉妹だけではありませんでした。

双子の母親もまた狂っていくのです。

ここで不思議なのは「なぜ双子の母親まで呪われるのか」ということです。

この段階で一番怪異に悩まされているのは健治に横恋慕をした香奈江、二番は双子の母親です。

なぜ香奈江と一緒に沙代子をいじめぬいた鈴江ではなく、母親の方に呪いが向かったのでしょうか?

それはおそらく母親が双子に「母親の実家に伝わる呪いの方法」を教えたからです。

これは非常におぞましい方法で、母親も昔の恋敵に使ったことがありました。

沙代子をきっかけにして、その恋敵の恨みが母親に還ってきたのでしょう。

結局何もわからないまま伊東は東京へ帰りました。

しかし伊東の周辺でも怪異は起こります。

沙代子の妹・今日子は怪異が起きる度に何かにとりつかれたかのような振舞いをします。

それはまるで今日子を媒介にして沙代子が呪いを起こしているようでした。

一方、呪いは島本家全体にまで及び、じわじわといたぶるように広がっていきます。

もはや呪いは沙代子のものだけではなく、島本家自体が背負っていた業が一つの「なまなり」と化しているようでした。

伊東

自殺者の霊は残るとされています。(中略)

それが恨みの対象となる者を呪い殺すことがあると……。
この別名が「なまなりさん」なのでしょう。

そして沙代子の七回忌が近づき、双子の父親から連絡が来ます。

伊東は再び新潟の島本家に向かい、そこで壮絶な怪異を体験することになります。



この後の双子姉妹の末路については、ぜひ本編を読んでみてください。

後日談:怪談は怪異を呼ぶ

この「後日談」は角川ホラー文庫版で加筆された章です。(ハードカバー版、MF文庫ダ・ヴィンチ版には未収録)

本編(一日目、二日目)終了後の後日談になります。

kindle unlimitedは角川ホラー文庫版なので読むことができます!

内容を簡単に説明すると

  • 「二日目」の後、ある人物が伊東のもとを訪れた話
  • 健治のその後
  • 「なまなりさん」出版後、著者の周囲で起こった怪異

ボーナストラックのような位置づけの章で、読むと本作の怖さがより深まります。

伊東が言ったように、なまなりさんは著者の方に来てしまったようですね。

中山市朗「なまなりさん」
感想

謎が謎のまま残る

「なまなりさん」は読了後になんとも言えないモヤモヤが残る作品です。

話のテンポが良く、人の怖さも怪異の恐ろしさもきっちり書かれている。
なのにモヤモヤするのは「多くの謎が残ったまま終わる」からです。

これは本作の語り部である伊東の立ち位置によるものです。

伊東は呪いの主人公である沙代子と双子姉妹の両方とつながりがあり、それぞれに相談される立場です。
しかし自分から呪いの原因を突き止め、解決しようという積極性はありません。

「なまなりさん」は、伊東にとって知人友人に起こっている怪異であり、基本的に他人事なのです。

伊東はあくまで脇役ということですね

その結果、本作は脇役から見た怪異を点として並べた構成になっています。

そのうえ点と点を繋いで線にする場面が少ないため、ほとんどの謎はそのままで終わります。

この、怪異の全容がわからない何とも言えないモヤモヤや不安が、実話系怪談の怖さではないでしょうか。

結局真相は謎のまま。
だから読み終わってもすっきりしません。

断片的に見せられた怪異はなんだったのか?
本当は全て嘘なのではないか?
いややっぱり現実で、全てはつながっているのではないか?

このモヤモヤを解消するためには、もっと怪異を知り、考察することが必要です。

そして知るとは怪異に近付くということです。

伊東

もう一度念を押しますが、後悔しませんね。

一旦「これ」に関わったら、それはそちらに行くかもしれませんよ

知ってしまった伊東と著者がどうなったのかは、先ほど紹介した「後日談」を読んでみてください。

以上、中山市朗著「なまなりさん」の紹介でした。

長編の実話怪談の中でも特に有名な本作、ぜひチェックしてみてください!

「実話系怪談」の世界

短編の実話怪談も読んでみたいという方には「新耳袋」がおすすめです。

もっと興味が湧いた方は……

「新耳袋」

百話を完結させると怪しいことが起こると語り継がれる「百物語」。自ら蒐集した怪異現象の数々によって「百物語」のスタイルを現代によみがえらせ、一大怪談ブームの火付け役となった稀代の怪談実話集!

amazon 「新耳袋」より引用

なまなりさんの著者・中山市朗氏が木原浩勝氏と共著したのがこの「新耳袋」。
実話系怪談のジャンルを確立させた作品です。

実話系怪談を百話集めて百物語に見立てる発想が凄い!

一日一話ずつ読んだら百日目に何か起きるかもしれませんね


それでは次の不思議な本でお会いしましょう

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